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分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業(自然科学研究機構) 分子研リポート2007 | 分子科学研究所

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5-3 分野間連携による学際的 ・ 国際的研究拠点形成事業 (自然科学研究機構)

5-3-1 概要

自然科学研究機構では,新分野創成型連携プロジェクトとして「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」 を行っている。これは,機構内で2月に公募され,審査によって採択課題が決められ,年度末に評価を行っている。

分子科学研究所からは,研究所が主体的にまとめている「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中 核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」および「自然科学における階層と全体」プ ロジェクトに多くのメンバーが参加している。またこの他に,少人数のグループ研究が走っている。「自然科学にお ける階層と全体」では,世界的に著名な研究者を海外から招き,“ International S ymposium on Hierarchy and Holism (IS HH)

—B ridging across D ifferent Hierarchies in Natural S ciences—” を岡崎コンファレンスセンターにおいて開催した。これは, 広い範囲の研究者に自然科学研究機構の活動と組織を広く知らしめると共に,細分化・専門化した蛸壺的な研究の流 れが支配的となっている現状を脱皮し,これら各階層を支配する統一的な概念を探ろうという趣旨で行われた。

5-3-2 巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成

本プロジェクトは,方法論の開発からそれに基づいた巨大計算にいたるまで,分子・物質の第一原理から出発した 計算科学研究の中核拠点を形成し,物質科学および分子・物質を核とするナノサイエンス,バイオサイエンス等の自 然科学の諸分野における世界の主導権を獲得することを目的としている。また,分野間連携に基づいて,分子科学, 核融合科学,生命科学,天文学といった異なる自然科学階層に属する各分野での異なる物質観,異なる方法論をお互 いに共有し,また融合することにより,特に大規模複雑系を構成する分子・物質に対する計算科学研究にブレークス ルーを実現するとともに,それぞれの分野においても方法論に新機軸をもたらし,学際的新分野を形成することを目 指している。

更に,機構内外におけるこのような活動を通して,分子・物質シミュレーションナショナルセンター形成へ向けて の基盤形成を行っている。

このため,2007年度は,連携研究,ワークショップ,人材育成等について以下に示すような活動を行った。 (1) 連携研究

連携推進課題(3課題)(*責任者)

・巨大計算に向けた粒子シミュレーション手法の開発(分子研・岡崎

、平田、永瀬、斉藤、核融合研・堀内、天 文台・富阪、東大・北尾、産総研・森下)

・分子多量体形成と生理機能(基生研・望月

、生理研・永山、分子研・岡崎、平田、東大・北尾)

・物質・電磁場相互作用系のシミュレーション(分子研・信定

、米満、斉藤、核融合研・中島、東北大・森田) 連携課題(14課題)

・プラズマ大規模シミュレーションのための効率的並列計算手法開発(核融合研・堀内、中島)

・輻射輸送計算を用いた星間化学進化の研究(天文台・富阪)

・ミトコンドリアの energetics simulation(生理研・永山)

・概日リズム振動の生体分子反応シミュレーション(基生研・望月)

・両親媒性分子水溶液の大規模分子動力学計算(分子研・岡崎)

・量子古典結合多粒子系の非平衡集団運動制御の理論(分子研・米満)

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(森田)

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・ナノ分子の量子化学計算(分子研・永瀬)

・電磁場と露に相互作用した多電子ダイナミックスの解析(分子研・信定)

・3次元 R IS M による分子認識(分子研・平田)

・分子動力学計算に基づく凝縮系ダイナミックス(分子研・斉藤)

・第一原理分子動力学計算による液体及びアモルファスのポリモルフィズム(産総研・森下)

・生体超分子の立体構造変化と機能(東大・北尾)

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(東北大・森田) (2) ライブラリの整備

(3) ワークショップ

・第4回連携シンポジウム 2月13日

・分子・物質シミュレーション中核拠点セミナー 第21回〜第27回

・討論会、学会の共催 (4) 人材育成

第3回分子・物質シミュレーション中核拠点形成事業人材育成講座

「分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで—」 12月17日−21日 (5) 実施体制

機構内11グループ 理論・計算分子科学、天文台、核融合研、生理研、基生研 機構外3グループ 東大、東北大、産総研

5-3-3 イメージング・サイエンス

(1) 経緯と現状

研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。

平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。

平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。

現状では,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択されている(「イメージング・サイエ ンス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング —」など)。これが上述の提 案に代わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進している。

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(2) 実施された行事

このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。

平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。

平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の観客を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる一般参加者があった。こ のシンポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネル ディスカッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講 師によって,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集 まりパネルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年 に出版の予定で編集作業が行われている。

平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced Imaging and Plasma D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。

5-3-4 自然科学における階層と全体

自然科学研究機構の新分野創成型連携プロジェクトとして実施されている「自然科学における階層と全体」は,分 子科学研究所,生理学研究所,基礎生物学研究所により実施されている「プロジェクト1:生物系における情報統合 と階層連結」と核融合科学研究所,国立天文台を中心として実施されている「プロジェクト2:重力多体系・プラズ マ系における連結階層シミュレーション研究拠点形成―長距離相互作用が支配する多体複雑系での連結階層シミュ レーション研究拠点形成―」の二つのプロジェクトを中心にしている。全体会議,シンポジウム等は,2つのテー マを合同で扱い,自然科学に於ける階層と全体という新しい視点で自然科学の理解を深め,新分野創成に繋げて行く ことを目指している。

分子科学研究所が主に関与しているプロジェクト1の概要は,以下の通りである。生物系における研究においては, 遺伝子や蛋白質に関する分子レベルでの膨大な情報が得られている一方で,これら分子レベルの情報から,生理機能 の発現や形態形成などの「生物らしい」振る舞いが生じるプロセスについては,未解明な点が多く残されている。こ

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れは,生体が,分子,細胞,器官,個体といった異なる階層により構成されていることにも起因している。生体機能 の成り立ちを知るためには,各階層において「階層を構成する素子(エレメント)についての理解」から始まり,「階 層内でのエレメントの複合体化と情報のやりとりによる機能創出機構」の解明,さらには「上位階層への連結機構」 を明らかにすることが必要である。分子・細胞の階層を例にあげると,各分子の機能を明らかにするだけではなく, 分子複合体形成による新規機能の創出,分子間の情報伝達による機能統合を知ることにより,はじめて,細胞機能の 成り立ちの仕組みが理解できると考えられる。すなわち,遺伝子や蛋白質など分子レベルの情報が,細胞機能のよう なマクロなレベルへ伝達される過程を理解すること,分子が担う情報がよりマクロな階層で統合され,細胞や組織さ らには個体の振る舞いが創発される過程を理解することが,我々が取り組むべき課題であるとも言える。

本プロジェクトにおいては,異なる研究バックグラウンドを有する研究者が,上記のような意識を共有した上で, 有機的な連携を計りつつ,「生物系における情報統合と階層連結」に関する包括的理解に向けて,具体的には以下に 述べるような研究を行う。分子科学研究所からは,小澤岳昌准教授がテーマ(1),青野重利教授がテーマ(2)に関す る研究を進める。

テーマ(1):生体内における情報統合および機能統合を解析するための新規な研究ツールの開発を目的として研究 を行う。本研究では,タンパク質再構成系(protei n reconsti tuti on system)という新たな概念に基づくレポータータン パク質を創案・開発し,生きた動植物個体内で機能する生体分子を可視化するための,新たな原理に基づくプローブ 分子を開発する.具体的には,R NA ,タンパク質間相互作用,タンパク質リン酸化,酵素活性,セカンドメッセンジャー, ステロイドホルモン等を標的とし,蛍光あるいは発光に情報変換するプローブ分子を開発する。また,他の研究グルー プの研究に対し,このようにして開発したプローブ分子の積極的な適用を計る。

テーマ(2):分子間情報伝達による情報統合および機能統合の分子機構解明を目的として研究を行う。本研究では, 外部情報による遺伝子発現ネットワークの制御に関与するセンサー型転写調節因子,外部情報(外部環境シグナル) による細胞運動制御系である走化性制御系を対象として研究を行う。特に,センサー型転写調節因子による外部情報 センシング機構および遺伝子発現調節機構の解明,走化性制御系における情報統合機構の解明,ならびに統合された 情報が如何にして細胞の運動制御というマクロな性質に反映されるのか,その分子機構の解明を中心に研究を進める。

テーマ(3):分子階層における情報の統合により細胞階層での機能を理解することを目的として研究を行う。本研 究では,イオンチャネル・受容体等の神経細胞の機能素子の,分子間相互作用や分子複合体形成による機能修飾に関 する研究を行う。具体的には,代謝型グルタミン酸受容体の分子複合体形成による G 蛋白質応答の種類の切り換え, A T P 受容体チャネルの発現状況依存的な構造と機能の変化,細胞長伸縮に寄与する陰イオントランスポーターファミ リーに属するプレスチンの分子複合体の同定とその機能的意義の解析に焦点をあてて研究を進める。

テーマ(4):生体情報の統合による個体階層での行動の規定について理解することを目的として研究を行う。本研 究では,空腹等の生体情報や,脂肪細胞由来の液性調節因子レプチン等による情報が視床下部で統合されて,摂食行 動やエネルギー消費行動に結びつく機構を明らかにする。なかでも,視床下部における生体情報の統合に重要な役割 を果たしている酵素 A M P キナーゼの働きに着目して,この遺伝子を改変した実験動物等を用いて行動レベルでの研 究を進める。

テーマ(5):情報が統合され機能が創出される過程を,数理的手法を用いて研究する。本研究では,シグナル分子 の個別的な相互作用から,分子の時空間分布の非一様性が作り出され,生体機能が生まれる過程を,ダイナミクスと して捉え,微分方程式系などを用いて解析する。具体的には連携内の他のグループの実験データを対象とした共同研

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究を目指す。生体機能創出に必要な,分子間相互作用の条件を,力学系理論を元に定める。これにより,分子階層に おける情報を統合し,機能階層の視点から意義付けを行うと同時に,それぞれの階層における振る舞いを予測する。

テーマ(6):分子キラリティのような分子レベルでの情報が,細胞や個体といった上位階層の情報に展開されてい く過程の解明を目的として研究を行う。本研究では,発生における生物の左右性決定において,マウス初期胚の繊毛 が作る左向きの水流(ノード流)の役割を解明する。ケモルミネッセンスや二光子顕微鏡といったイメージング技術 を用い,in vivoでノード流がどのような水流のパターンを作るか調べる。また水流が体の右側と左側の細胞に何らか

の差を生み出す機構として,シグナル分子の不均一な拡散,あるいは分子ではなく物理的な刺激が働いている可能性 を想定し,シミュレーションによる検討を行うと共に,カルシウム濃度や膜電位の測定,分子プローブによってその 実体を探索する。

今年度は,5月16日,17日の二日間,岡崎コンファレンスセンターにおいて「自然科学における階層と全体」第 4回シンポジウムを開催した。本シンポジウムでは,2件の特別講演の他,プロジェクト1ならびにプロジェクト2 に参加している研究者,および外部からの講演者による13件の講演が行われた。

また,2月21日から23日の3日間,岡崎コンファレンスセンターにおいて「International S ymposium on Hierarchy and Holism—B ridging A cross D ifferent Hierarchies in Natural S ciences」と題した国際シンポジウムを開催した。

参照

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